レヴュー

ザンクトフローリアン効果

ブルックナーの音楽は人によって好き嫌いがはっきりしているようで、受け入れられない人にとっては頑としてどこがいいか分からないらしい。「面白くない」「魅力が感じられない」とはっきり言う人もいる一方、最上の音楽としてあがめ奉る人もいる。なんとい…

ギャグとシリアスの狭間で ~みなもと太郎氏を心から悼む

相変わらず、いや今までにも増して猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大の中、またひとり千葉真一という昭和の大スターをこの世から失い、その死亡記事を新聞で読んでいたところ、ふと隅っこの方で小さく囲まれた訃報が目に入ってはるかに強い衝撃を受…

コロナ禍でのニューイヤーコンサート

今年も元日にウィーンフィルのニューイヤーコンサートが無事開催された。 もっともこの世界的なコロナ禍の中、いつも通りに開催することは到底無理な話で、結局史上初の無観客開催となった。ただ金銭的に見れば、世界中の90もの国や地域に配信され、さらには…

"スター"のまばゆさ ~山口百恵ラストコンサートを観て

'70年代に少年期を過ごした自分にとって、山口百恵は特別な存在感を持っていた。 別段ファンだったわけではない。コンサートはもちろんレコード(当時)を買ったこともなく、ただ単にTVに出てるのを観ていた程度だが、なのに年を重ねるごとに芸能界での存在…

これはアジモフとはいえないな~映画「アイ, ロボット」

コロナ禍のおかげで最近は家にいることが多く、休みの日などTVに向かう時間が格段に増えた。で、そんな時、以前録画して(いつか観よう)とそのままになっている映画をこの機会にちゃんと観る機会も出てきて、徐々にHDに空きが増えて行った。 そうして観た…

哀悼 吾妻ひでお

「えっ…」 その訃報を知った時、仕事中にもかかわらず、しばらく意識が遠のいてしまった。 まさか…。いや、到底長生きができないような身体だというのは承知していたが、ほんの少し前に「不条理日記 完全版」(復刊ドットコム)を入手して往年の大傑作を改めて…

モンキー パンチ氏を悼む

びっくりした。 モンキー パンチ氏の訃報を聞いて最初にしたリアクションがこれだった。もちろん既にかなりの高齢であり、最近は作品を発表することもめっきりなくなっていた事は認識していたのですが、たまたま現在「週刊漫画アクション」創刊期を描いたド…

手塚治虫は死なず!

元号が平成に変わったばかりの2月10日、なにげなく朝刊を開いた途端憶えのない衝撃が走った。 手塚治虫死す! その訃報が目に飛び込んできた時の感興はなんとも言い難い。ただなんというか、生まれてこのかたいつも必ずあったはずの精神的支柱がいきなり消…

或るニョーボの死まで~須賀原洋行『天国ニョーボ』

よしえサンが亡くなった――それを知った時の衝撃は今でも忘れられない。気がつくともうあれから5年以上の歳月が経っているというのに、なんだかついこの間のような気がしてしょうがないのだ。たとえ直接面識がなくとも、長年敬愛していた人の死は哀しいもの…

不遇な作品に突如訪れた僥倖~桜沢 鈴「義母と娘のブルース」

桜沢 鈴(さくらざわ りん)というマンガ家を知っている人はいったいどれぐらいいるんだろうか。 僕の中では、前に追悼記事を書いた三好 銀と並んで「誰も知らないかもしれないけど個人的には激押し」という位置づけの人だったんだけども、追っかけ続けている…

「響け!ユーフォニアム2」を観終えて

昨年放映された「響け!ユーフォニアム2」に関しては、放映開始前に「期待と不安」と題して投稿し、かつ各回放映ごとにコメントの形で所感を述べていったが、無事最終回が終了した今の時点で、改めて全体の総括をしてみたいと思う。 結論から申せば期待は決…

佐村河内 守を擁護する気はさらさらない、だが…~吉本浩二「淋しいのはアンタだけじゃない」

物心ついた時には「鉄腕アトム」があり、小学生時代に「ブラックジャック」の連載にリアルタイムで接していた世代ということもあって、手塚治虫作品は今もなお自分にとって特別な存在であり続けている。そんなだからこそ数年前に「ブラックジャック創作秘話…

新垣 隆の新作交響曲「連祷」を聴いて

あの"新垣 隆"が新作を、それも交響曲を発表し、しかもそれがDECCAからCDが発売されると聞けばさすがに気になってしまい、どんな曲だろうと思わず買ってしまった。 新垣 隆という作曲家、まぁ僕も他の人と同様、一昨年の一連のゴーストライター騒ぎの際に…

 天才"傍流"マンガ家の限界~岡崎二郎「ビフォー60」

岡崎二郎の名前は一般にはどれだけ知られているだろうか? 一部コアなファンからは「マンガ界の星新一」「藤子・F・不二雄の正統な後継者」と称されるまでに高い評価を維持し続けているのだが、おそらくその名を聞いて「ああ、あの…」と分かる人は相当マニ…

哀悼 三好 銀

来月発売されるマンガの新刊をチェックしていて"三好 銀"の名前を見つけ、「おお、久々に新刊が出るのか」と喜んだのもつかの間、「追悼作品集」の文字が目に入って硬直した。 え…三好 銀って――亡くなったの? あわてて検索してみると、今年の8月末、膵臓が…

レニングラードフィルとサンクトペテルブルクフィル

先日NHKで放送されたテルミカーノフ/サンクトペテルブルクフィルの演奏するショスタコーヴィチの交響曲第7番「レニングラード」を聴いて、なんとも複雑な気持ちになった。 僕がクラシックを聴きはじめた中学時代、レニングラードフィルとと言えば"泣く…

「響け!ユーフォニアム」第2期への期待と不安

今週からいよいよ「響け!ユーフォニアム」の続編、所謂"第2期"の放映が始まる。昨年、いい歳こいてこのアニメには思いっきりはまり、TVの総集編と知りつつ劇場版にまで手を出してしまった身としては、楽しみにしない訳にはいかない。 一応言っておくと僕…

緩慢な悲劇~ヤマシタトモコ「花井沢町公民館便り」

子供の頃にはちょっとありえなかったことだけども、最近は新聞でもマンガの書評が定期的に載るようになった。知ってる作品が取り上げられていればどんなふうに書かれてるかついしげしげと見てしまうのだが、こういうのに執筆している人はちょっと斜に構えて…

"厄災"としてのゴジラ ~「シン ゴジラ」を観て(ネタバレ注意)

遅ればせながら先日、話題の映画「シン ゴジラ」を観てきました。 子供の頃、TVや映画で怪獣に囲まれて育ったおかげで今でもそういうものに対する抵抗はないけども、一方でやはり大人になるといろいろ目線も上 がってきて、正直子供だましのものを今更観る…