原因と結果を取り違えてないか?

 その猛威をまったく衰えさせる気配を見せない新型コロナウイルス(COVID-19)。おそらく今年の新語・流行語大賞は「3密」「クラスター」「アベノマスク」といったコロナ関連の用語が大半を占めるだろうなとか、「今年の漢字」はきっとコロナ禍の「禍」になるだろうとか、少なくとも今年1年すべてこれにかき回されるなるだろうな、とやるせない気持ちにさせられる。
 不穏な状況の常だが、世の中で怪しげな情報が飛び交うことが多い。そして今日は大阪府知事自身がこんなことを言い出した。
「特定の成分入りのうがい薬を使ってうがいをすれば、コロナ感染率が下がる」というものだ。
https://www.asahi.com/articles/ASN8465THN84PTIL01M.html

 なんとも眉唾な話だが、話を聞いていくうちに「確かにそういうことはあるかもしれない」と思った。ただそれは、要はうがい薬によって口腔内が殺菌されてコロナウイルスが一時的に減ったってだけで、体内に潜むウイルス本体はそのままだろう。言ってみれば、手に付いたコロナウイルスも石鹸で洗うことによって手からウイルスがいなくなるのと同じことだ。抜本的な解決とはほど遠い。感染して体内で増殖したウイルスは口腔内にもあふれやすく、それゆえに鼻孔の奥の組織や唾液を採取することによりPCR検査ができるのに、その口腔内のウイルスだけを減らすって、原因と結果を取り違えているようにしか思えない。
 うがいすることにより「重症化を避けられる可能性もある」とは一応言っているが、現段階では推測の域を出ないことであり、希望的観測じゃないのか?と疑いの目を向けたくなる。

 なによりも一番まずいのは「PCR検査の前にうがいをすれば、一時的に口腔内のコロナウイルスが減少することによって、感染者でも陰性と出る可能性がある」ということだ。つまり、今陽性と出てほしくない人にとって、検査逃れのいい方法を教えてもらったようなものだ。そして案の定この発表があってからその日のうちにうがい薬を買い占めに走る人が一気に増え、たちまち品薄になってしまった。一応会見内で「買い占めはしないでください」とは言ったようだが、そんな言葉に効力があると思っているのだろうか。

 今回のコロナ対応で存在感を見せた吉村知事だが、今回はどう考えても勇み足としか思えないのだ。