なんで京アニが…。

 ただひたすら、強い憤りを感じずにはいられない。

 僕にとって京都アニメーションと言えば「響け!ユーフォニアム」を制作した会社、という認識なのだが(その後再放送された「けいおん!」を観たぐらい)、非常に緻密で丁寧に作りこまれた高い完成度を常に維持し、それは作画だけに止まらず、演出・声優の演技・音楽等あらゆる方面にいきわたっており、「アニメって実は総合芸術なんじゃないか」なんて考えてしまうほどそれは想像の域を超えていた。特に「けいおん」「ユーフォニアム」共に音楽が非常に重要な役割を担っているのだが、そのすべてにおいてまったく手を抜かず、むしろアニメを離れても存在し得るだけの価値を持った音楽作品まで生み出してしまい、でもやはりその音楽をアニメの中できっちりと表現しきってしまうその手腕は目を瞠るしかない。

 その比類ない製作者集団のかなりの人たちが、たった1人の愚かな行為によって1日で無に帰するほどの惨事に陥った。これにより、現在制作進行中の作品も、企画段階の作品も、すべて無期延期になってしまうだろう。

 現時点で死者だけでも33人に上り、助かった負傷者も復帰できるかどうかは分からない。そしてこのスタジオに置かれていた資料や成果物もすべて取り返しのつかないものになってしまった。これらはすべて京都アニメーションが今まで作りだしてきた文化および人的資産の喪失に他ならない。

 現時点ではその影響がどれほどの大きさなのかは測りかねるが、再開できるまでそうとうな期間の操業停止を余儀なくされるだろう。ただ、この事件によって、京都アニメーションと言う日本が誇りうる会社が消滅することだけは避けたい。

 犠牲者の冥福をお祈りするとともに、時間がかかってもいい、その復活を心から祈っています。

 

 【7月19日追記】

 世界中の京アニファンから弔意と支援の輪が広がってきている。

 本当にありがたい事だが、自分もなにかできることを…と、とりあえず「リズと青い鳥」のブルーレイをポチった。普段アニメの円盤を買うとかまずしないんだけども、「リズ」は昨年上映したのを観て、まさしく珠玉の名作と呼ぶにふさわしい出来に心底感激してたので、手許に置くのに躊躇はなかった。主要2人の心理描写の繊細さはもちろんの事、音楽をここまで精緻に扱い、劇中でもっとも大切な所を音楽そのもので語らしめたところは驚嘆した。なによりこの映画を観て「オーボエってなんて素敵な音がするんだろう」と気づかされた人がたくさんいるのではないだろうか。それだけでも嬉しい。

 

 【7月21日追記】

 その後、病院に収容された重体者のうちひとりの死亡が確認され、死者は34人になった。犯人の名前も公表され、これまでの言動等もいろいろ分かってきたとはいえ――異様なのは、その34人の犠牲者の名前が今もなお一切公表されていない事だ。さすがに事件後3日も経てばその時建物にいた人数、うち負傷者(=助かった人)の情報もはっきりして、消去法では犠牲者の特定はほぼできていると思われるが――これは、個々の遺体の損傷が激しすぎてどの遺体が誰なのか、その特定が難しくなっている、ということを意味しているのだろう。助かった人の中にも今後不自由な生活を強いられる人もいると聞く。ほんと、憤懣やるかたない。