特別な事は何も言えませんが…

 イチローが現役引退することが遂に決定した。
 もちろん昨年シーズン中の前代未聞の契約、さらに今年東京での開幕戦の出場決定という変則的な事象からこの事を予感する人は多かったろう。しかしイチローなら、そんな思惑を必ずや覆してくれるに違いない、そう信じる気持ちがどこかにあった。

 しかし――今年に入ってアメリカから伝わってくるオープン戦の不振情報はこちらの気持ちを不安にさせ、そして東京に乗りこんできてからのプレーを観て…「ああ、イチローもやはり"人の子"だったのだ」そんな事を思わずにはいられなかった。

 そこにはこちらの知るあの"イチロー"の姿はもうなかった。確かに肩や足腰と言った体力的には年齢を感じさせないものがあったが、目がボールに追いついてないのか、そのせいで反射神経がにぶっているのか、動き出すのに一瞬の遅れがあって、その一瞬が命取りになっているように感じた。
 打席に立った姿を見ていても、もうなんだか打てる気がしない…。実際に凡退を繰り返しているし、なによりも何度となく見逃しの三振をするのを見て、もはやその予感は決定的になった。もうなすすべもなく、ただボールがキャッチャーミットに収まるのを一歩遅れてただ見ているような様子なのだ。メジャーはもちろん、日本チームのスピードにも追いついていないように見えた。

 きのうのメジャー開幕戦、イチローは第1打席にセカンドフライを打ち上げた後、あっさりと交代させられた。その瞬間(ああ、2戦目の先発はないな)と思った。
 しかし今日もまたスタメンにイチローの名前がある。なんだか奇妙な気持ちだった。今日こそは何か見せてくれるのか…しかしあいかわらず凡退を続け、第3打席ではまたもやなすすべもなく見逃しの三振で終わった。「戦力外…」脳裏にそんな言葉が明滅した。
 さらに試合後に会見を開くという。もはや決定的だった。そしてネットを検索すると、MLBでは既にイチローの引退を報じているとの文字が…。

 この期に及んでこの引退に異を唱える人はいないだろう。が、それでも感無量でどうしようもなく、うまく言葉が出てこない。ただ、ONに匹敵するスーパースターは、ただ一人、イチローだけだということだけは確信した。それは人格的なこともすべてひっくるめてだが、彼のような人はいるだけでもまわりに素晴らしい影響を波及していくだろう。今後指導者として球界に残ってくれるとは思うが、これからも日米球界すべてに素晴らしいものを残していってほしい、その事を願わずにいられない。