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「響け!ユーフォニアム2」を観終えて

 昨年放映された「響け!ユーフォニアム2」に関しては、放映開始前に「期待と不安」と題して投稿し、かつ各回放映ごとにコメントの形で所感を述べていったが、無事最終回が終了した今の時点で、改めて全体の総括をしてみたいと思う。

 結論から申せば期待は決して裏切られずに全体的に素晴らしい出来栄えだったけども、一方で危惧していた部分も予想通り出てしまい、必ずしも第1期のような完成度には至らなかった。

 危惧していた部分――それは前回も書いたように原作第1巻と第2巻の「性格の差」だった。第1巻が最初らしくさまざまな要素がからみあって徐々に組織が組み立てられていく過程が描かれていて、非常に多様な内容を持っていたのに対して、第2巻はそれを受ける形で、第1巻で少しだけ触れられていた前年発生の「1年生大量退部」によって生じた部内の歪み、それが端的に表れた「みぞれと希美問題」の発生と解決に至るまでを一気呵成に描いた作りになっていたのだ。それだけに第2巻は第1巻や第3巻に比べて少し短めで、他の要素を加えづらい。結果的に第1期のように第2巻1冊分を1クールでやるのは分量的に足りなかったのだ。

 結局、「響け!ユーフォニアム2」の制作において一番の壁となったのは、1クール13回という放送業界の枠組みそのものだったのだろう。このスタッフなら、おそらく第3巻をアニメ化するならば1クールでぴったり収まるだけの内容を組み込めただろうし、結果第1期に勝るとも劣らぬものができたと思う。しかし第2巻を飛び越して第3巻を創る訳にもいかないし――。おそらくこの点は制作の最初の段階で原作をどう処理するかさんざん検討されただろうし、結論として、1クールで第2巻と第3巻を一気に駆け抜けるという策を取ったのだろう。
 だがそうすると今度は無理矢理その内容を押し込む形となり、あちこちで駆け足or端折るという場面が出てきてしまった。第1回を倍の1時間枠にすることにより実質14回分の時間を確保したとはいえ、それだけでまかないきれるものではなかった。

 殊にそれは第2巻分で顕著になった。なにせ最初の5回(実質6回)分の時間しか割り当てられなかったのだから。その展開の速さはこちらの予想を超えていた。第2回の前半でプール回を処理し、後半と第3回で合宿を駆け抜け、第4回では早くもクライマックスに――。その結果、さすがに原作のすべてを処理することができず、重要な要素がぽろぽろと抜け落ちてしまっていた。
 そのひとつが「強豪ひしめく関西大会突破の困難さ」だ。幸先よく府大会を勝ち抜いたものの、その次の関西大会は圧倒的な強さを誇る"3強"がひしめいていて北宇治の突破はほぼ絶望的だった。「みぞれと希美問題」と並行して、そのプレッシャーが原作ではひしひしと感じられたのだが、その部分が駆け込みで申し訳程度にしか描かれなくて、そのため関西大会突破のドラマ性が薄れてしまった。ここで姿を消す梓とのやりとりももっとしっかり描いてくれれば…と悔やまれる。
 その影響は、第5回の関西大会の描き方にも表れてしまった。もちろんここではこちらが待ち望んでいた「三日月の舞」ノーカット演奏なんてとんでもないものを見せてくれたのであんまり文句はいいたくないが、北宇治がどうして"3強"の一角を破って関西大会を突破できたのか――北宇治の後に演奏した"3強"のひとつ秀大附属に起こった事件、これは第2巻の中でも特に強烈に印象に残った部分だけに、ここがばっさりカットされてしまったのには悲嘆にくれた。
 その結果、北宇治が強烈なプレッシャーの中いかにギリギリで薄氷の勝利を得たのか、そのところが描かれず、なんとなく関西大会を突破したかのような風になってしまったのが、今回一番残念に思う所だ。

 そして「みぞれと希美問題」に関しても、やはり駆け足でやったためか踏み込み不足になった事は否めない。第4回の衝突も、なんか「いろいろ誤解もあったけどなんとか和解できてよかった」みたいな感じで非常にマイルドに描かれてそれで終わってしまった。これもまぁ外面的にはそんな風にも見えることは確かなんだけど、原作を読むと2人の間の断絶の深さにぞっとするほどなのだ。みぞれの想いは希美にはまるっきり伝わってない、というか想像の埒外にある。詳しくは原作を読んでもらうしかないだろうが、2人の溝は実は全然埋まってない。そのことを思い知らされながらも、みぞれは希美がまた自分のそばに戻ってきてくれたことが嬉しくてその表面的な和解を受け入れる――。
 僕はこんなところに作者の(決してラノベの域にとどまろうとしない)"作家魂"を見た思いなのだが…アニメでは時間の制約もあったのかもしれないが、なんかあえて踏み込まないという判断をして表面的な(きれいな)解決で済ませたような気もする。
 ま、このみぞれの想いをあすかもまったく理解してなかったことが直後に判明するのだが、そちらだけアニメで取り上げただけになんか中途半端な後味が残った。

 ※アニメから外れるが、この"両者の断絶"は作者にとってもかなり重要なテーマらしく、スピンオフの「立華高校マーチングバンドへようこそ」でも形を変えて再び取り上げている。こちらは言ってみれば同じ問題を希美の立場から描いたようなもので、作品に明るく前向きなだけでない影の部分をつけ加えていた。

 関西大会を終えて全国大会を控えた第6回からはそれまで時間の制約に押し込まれた閉塞感が一気になくなり、なんだかのびのびと描かれるようになって、観ているこちらもなんかほっとするようになった。第3巻ではメインにあすかの問題、サブに久美子の姉麻美子の問題が共振するような構成になっているのだが、アニメはそれをうまく並行させてうまく響き合わさるように構成されていた。原作をアレンジしてうまく膨らませる部分もいろいろ見られたけども、ただやっぱり時間的にそんな余裕がないので、どこかを膨らませるとどこかが削られてしまって――。前半のようにちょっと致命的なほどのカットこそなかったものの、ちょっと「惜しい!!」と思う事はいくつかありました。膨らますところも第11話のように「どうしてここをそんなに膨らませるのかな?」と思うような話もあり、ちょっとバランス悪い気もします。なによりこれでは塚本君がかわいそすぎる。出番がことごとく削られちゃって…。
 そんな中でもほんと素晴らしい回があって、第9話と第10話はほとんど文句のつけようのない素晴らしい出来でした。ストーリー的にも最重要ポイントだという事があるんでしょうが、ここでの久美子とあすかのやりとりは思惑と感情に満ちていて、スタッフもキャストもその力を総動員したことが感じられます。なんかこれを観るためにこれまでずっと観続けていたんだ、という"報われた"感がありました。

 第12回の全国大会、ここで、まぁ、関西大会とは逆に、ドラマ部分に集中するために演奏全カットという思いきった手に出る訳ですが…。それでもいささか駆け足になってしまったのは、やはりそれでも時間が足りなかったんでしょうね。もしもできることならこの回も1時間枠で観たかったなぁ。少なくとも滝先生があすかに進藤正和の言葉を伝えるシーン、ここはもっとたっぷり時間をかけてほしかった…。
 しかしそんな思いも最終回を観たらかなり吹っ飛びました。原作ではほんの数ページしかないエピローグを、よくぞここまで…。ほとんどオリジナルになってましたが、ラストの卒業式のシーンは原作をきっちりと使い切り、かつうまい具合にアレンジして膨らまして、ほんとこれ以上ないラストシーンに仕上がっていました。最終回でのコメントの繰り返しになりますが、脚本・演出・作画・音響――その他すべてのスタッフの技量の高さには感服します。もちろん各声優の方々の演技にも。この作品を作っていただいたすべての人に感謝いたします。(しかし塚本君だけは最後まで不憫だ~っ!)


 全体を総括すると、やはり最後までこのアニメ制作は「時間制約との闘い」だったのではないかと思います。もし1クールという時間に縛られずに、そう…全20回(第2巻8回+第3巻12回)ぐらいのペースで作れたら、おそらくとてつもなくすごいものになった、そう思えるだけに、ほんと惜しい出来だったと思います。全国大会での演奏は全カットされてしまったけども、音楽の方は先にその分もちゃんと録音済みだったようですね。もうすぐ出るサントラCDには、ちゃんと「関西大会」と「全国大会」2つのヴァージョンが収録されてるようですから。

 ああ、もう、なんか「響け!ユーフォニアム2 ディレクターズカット版」みたいなのないのかなぁ、なんてついつい考えちゃいますね。